薬業時報
昭和26年7月11日

ルチンの薬理と応用(5)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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2.薬理作用 【ヒスタミン及び過敏症・利尿】

〔ヒスタミン及び過敏症〕
ウィルソン、モルタロテイ及びデエヅ(1949年)は、ある特別な事情の下にルチン10mgを腹腔内に注射したビタミンP不足の食餌で飼養されたラッテが、ヒスタミン監酸監LD50容量に対し防護されたことを発見した。ルチンがヒスタミンの静脈注射に先立つこと10~30分間に与えられたとき明確な防護が生じた。この現象は、ヒスタミンの注射前35分~65分に、ルチンが与えられたときには起こらなかった。ルチンとヒスタミンとを同時に注射したときは、二つの物質の間に直接な拮抗性がないことを示して、動物に何等の防護の結果を来さなかった。

平松氏(1941年)はビタミンPで、予め動物を処置することにより過敏性を防ぐことを報告したが、データが貧弱すぎたためウィルソン等はこの発見を確かめることは出来なかった。

レイマン、レーター及びネクルス(1947年)は、正常馬血清0.25ccをモルモットの腹腔内に注射し過敏症にして置き、12日後に馬血清の非経口投与でショックを与えた。ショックを与える30~45分前に腹腔内にルチンを与えた動物は、ショックの症状を現さなかったが、対象動物は全部が10分以内に死んだ。ショックを与える60分前にルチンを与えた動物は約15分間で過敏性のショックで死んだ。

ウィルソン、デエヅ(1948年)によればルチン1mgを腹腔内に与えた後、30~45分後にヒスタミンの致死量を与えた所、モルモットは10分以内にヒスタミンショックで死んだ結果を得ている。又クラーク、マツケイ(1950年)はルチン又はケルセチンスルホン酸ナトリウムを与えた後で、ヒスタミン燐酸の毒性が僅かに減少した結果を得たが、他の数種のフラボノイドは無力であった。

レビタン(1948年)は、家兎に2g以上の大量のルチンを与え、しかもヒスタミンの最小致死量に対し動物を防護することに失敗した。同人は又馬血清による感作を防止し得なかったし、又大量のルチンで家兎の過敏作用を防止し得なかった。

アルジョナア等(1949年)は、ルチンでモルモットの過敏性ショックを防ぎ得なかった。ヘブチング(1949年)もまたルチンでモルモットのヒスタミンショックを防ぎ得なかった。 ロート、シェパード(1948年)は馬血清によるショックに対するルチンの作用を研究した。モルモットは、1~20mgのルチンの腹腔内注射で防護されなかった。ただ同じ条件の下で卵白に対する僅かな防護力が認められたヒスタミンのLD100用量がモルモットに与えられたとき、ルチン10mgでは何等の防護作用を認めなかった。

〔利尿〕
フラボノールの利尿効果の可能性の問題はこの分野の数名の研究者の注意を引き起こした。赤松氏(1931年)は、家兎にルチン0.3~0.5gパーキロを与え、1日に排泄した尿の量の著しい増加を観察した。増加の現象はルチンの投与期間認められ、ルチン投与を止めたとき尿量はもとに還った。同士はまたルチンとカフェイン、プリン、テオフィリンの間に相乗作用があることを報告している。ルチンとカフェイン又はテオフィリンの合剤は、各薬剤単独よりも、一層強く且つ引き続いた利尿作用があった。

福田氏及び河野氏(1928年)も、家兎を用いてルチンを含む数種のフラボノールの利尿作用を研究し、試験したすべての物質が活発な利尿剤であったとしている。又マスクル、パリス(1936年)は犬で反対の結果を得ている。

チムメル(1936年)は、ルチン液の注射でラッテに利尿効果があったが、蛙、モルモット、家兎又は猫では、効果がなかった。食肉類の動物は、尿中に監化第二鉄で緑色を呈する物質を排泄するが、草食動物では、このような反応がなかったことを報告している。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)