薬業時報
昭和26年7月

ルチンの薬理と応用(6)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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2.薬理作用 【菌の発育阻止作用・抗ウイルス性効果】

〔菌の発育阻止作用〕
コーチ等(1947年)はデイクマロールの菌発育阻止作用に、フラボノイドを加えた効果についてルチン及びケルチトリン竝にアグリコンのケルセチンが、ヂクマロールの菌の発育阻止性を中和しないのみならず、ケルセチンそれ自身が黄色葡萄状球菌に対し相当の毒性を持ち、1cc中0.1mgの濃度で完全に成長を阻止することを観察した。ルチンは菌の発育阻止作用がなかったがケルチトリンは微生物に対して僅かに毒性を示した。この効果はラムノシツドの一部が加水分解で生じたケルセンの少量に基因するのであろう。兎にも角にもルチンがケルセチンの2~3%を含んでいることが知られたから、観察された菌の発育阻止作用は、ラムノシッドそれ自身によって可能性がある。この発表まではフラボノールが菌の発育阻止作用を持つことは知られていなかったのである。

同年の後期にアンデルセン及びペリーは、グリンピース及びコーンステイブカゼインの培地中で、ルチン、ケルチトリン及びケルセチンの効果に関する彼らの研究を公刊した。ボトリウム菌による毒素構成に対し、ケルセチンは80~160PPMの濃度で培地中に広がる毒性を妨げた。ルチンは効果がなかった。又ケルチトリンは1000PPMの濃度で僅かな作用を示した。

マア及びフオンテイン(1948年)は結晶トマチンのアンチビオチイク効果に、ルチン及びケルセチンが拮抗作用を示すことを報告した。トマチンの抑制効果(1cc中0.1mg)はルチン(1cc中0.2mg)及びケルセチン(1cc中0.3mg)に対応した。又トマチン1cc中0.25mgの濃度では、ケルセチン1cc中0.5mgの濃度を要求した。ルチンは1cc中1mgの濃度で効果がなかった。これ等によってフラボノールは微生物の成長に何等の効果を持っていないと結論した。

ブスチンザ及びロペッツ(1948年)は、ケルセチンが黄色葡萄状菌、バクテリアミコシイデス、抗酸菌類(フレイ、恥垢菌、鳥結核菌、人型結核菌)の成長を抑制することを見出した。

コーチ等(1948年)はケルセチンの微生物抑制作用はpH7以上で発揮され、その数字を超えては殆どないことを見出した。pH6.5でケルセチンは1cc中0.075~0.1mgの濃度で完全に黄色及び白色葡萄状球菌、エロバチルスポリミクサ(野菜の分解に寄与する菌)及びブルセラ菌(牛の流産菌)を完全に抑制した。一部分の抑制作用としては連鎖状球菌のD及びE群らに数種のグラム陰性菌の形が得られた。モツレは1cc中0.15mgの濃度で25~30%抑制したが、他の5つのカビには効果がなかった。ケルセチンの作用は血清及び鉄の存在で失われたが、システインの存在ではなかった。ルチン及びケルチトリンは働きがなかった。

〔抗ウイルス性効果〕
カッティング、ドライスバッハ及びネッフ(1949年)は二十日鼠の狂水病ウイルスに対する数種のフラボノイドの予防的作用を研究した。ウイルスは薬品が供給され始めて4日後大脳内部に摂取された。そして薬局は試験の終わるまで続けられた。ケルセチン及びケルチトリンは明確な予防作用を示した。ルチンは前途の望みある結果を与えた即ち対象が21匹中4匹だけ生き残ったに対し14匹が生き残った。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)