薬業時報
昭和26年8月
ルチンの薬理と応用(9)
=米国農務省農薬研究報告から=
(常磐植物化学研究所提供)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
3.臨床試験 【毛細血管脆弱度増加症】
〔毛細血管脆弱度増加症〕
毛細血管脆弱度の増加症を癒すためにルチンを用うることは、1943年グリフィス、リンダウエル及びコーチによって発表された、ゴスリンのポシチイブプレシアメソッドで決定した毛細血管脆弱度増加症によって、複雑にされた高血圧の患者14名にルチンが使用された。その内11名の患者は12~16ヵ月続けられた。八人は毛細血管脆弱度増加症が2ヵ月以内に正常となった。他の3人は増加した儘であった。その中の一人は治療を始めて4ヵ月後半身不随を起した。残りの10人は観察の期間中何等の併発症を起さなかった二人の患者は毛細血管脆弱症が正常となった後、ルチンの服用を止めたところ6週間以内に脆弱度が再び増加した。ルチンを再び服用したので1ヵ月以内に正常に還った。引続いた報告でグリフィス(1947年)並にグリフィス及びリンダウエル(1947年)は、さらに多数の患者に対する結果を報告したが、それによると当初に毛細血管の欠陥を持った者の88%がルチン療法の後正常に還った。毛細血管の欠陥を持つ高血圧患者により多く宣告された網 出血又は卒中の傾向は欠陥がルチンによって訂された後には、毛細血管の欠陥なき患者に見られる数字と比較し得る数字に迄減少した。処理の患者の表は別表第一、第二の通りである。
(第一表)毛細血管の欠陥に対し処置を受けた患者の併発症の発生範囲
実験の当初増加していた450名の患者を16ヵ月取扱った結果
卒中 | 網膜出血 | 死亡 | ||
毛細血管脆弱度又は淋巴の流れが | 正常に回復した者 | 7 (1.5%) | 2 (0.4%) | 14 (3.1%) |
増加したままの者 | 19 | 12 | 13 | |
測定しなかった者 | 15* | 3 | 26** | |
計 | 41 (9.1%) | 17 (3.8%) | 53 (11.8%) |
実験の当初正常であった361名の患者の中では
卒中 | 網膜出血 | 死亡 | |
正常 | 5 (1.4%) | 3 (0.8%) | 13 (3.6%) |
*内8名はルチンを用いず
**内17名はルチンを用いず
群名 | 前療法 | 毛細血管 の脆弱度 | 皮膚の リンパの流れ | ロダン 又は ルチン療法 | *試験を繰り返した 人数 | 繰り返した 試験の患者百分比 増加 正常 |
1 | ナシ | 正常 | 正常 | ナシ | 59 44 | 0 100 0 100 |
2 | ナシ | 正常 | 正常 | ロダン | 88 36 | 18 82 17 83 |
(イ) 3 | ルチン | 正常 | 正常 | ロダン | 62 21 | 18 82 19 81 |
(ロ) 4 | ロダン | 増加 | 増加 | ロダン廃止 | 6 1 | 0 100 0 100 |
(ロ) 5 | ロダン | 増加 | 増加 | ルチンを開始 又は増加 | 20 9 | 0 100 0 100 |
* 試験の繰り返しは少なくとも六週間離して行われた、第一、二及び三群の患者に対する試験の繰り返し回数は平均2.7回である
(イ) これらの患者は最初に脆弱度又は淋巴流の何れか又は両方の増加を持っていたのだが、ルチン療法で正常に還った
(ロ) 第二及三群からの患者
同様な結果が、シャノー(1946年)ツファス(1947年)ハイン(1948年)及びグチエレッツ(1949年)から報告された。ドネガン及びトーマス(1948年)は指数は正常の状態には帰らなかったが、ルチン療法に続く容態の改善を観察した。網 症を伴った糖尿病は一層難治ではあるが高血圧は順調になる。而して網 症の61例中43例がルチン療法の継続でこの条件の改善を示した。エドレス氏病の9例中8例は改善され毛細血管脆弱症は殆ど正常に還った。
マクマアヌス及びランドリガン(1947年)は、減圧法(水銀柱マイナス20センチメートルで一分間適用)を用いて毛細血管脆弱度を決定し、10患者に4週間ルチンを用い、その間5患者を対象とした。
–––––––––––––––––––––––––––––-*
ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)